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活動的株主「カルパース」の素顔 (下) −議決権行使の実践的オピニオン・リーダー− |
| (2002年09月06日) |
1.運用スタイルと議決権行使
投資家の株式投資の方針は個人、事業法人、機関投資家、および外国人投資家によりそれぞれ異なる。また、株式保有の期間も短期、
中長期、または期間未定とその保有目的に応じて区々である。このため議決権に対する考え方も株式投資家・株主の立場からそれを
強く意識している株主もいれば、殆んど関心のない株主もいる。カルパースは年金受託責任を強く意識して、17年前からガバナンスに
基づきアクティビスト(活動的株主)と言われるほど議決権行使に最も関心が高く、その権利を内外の発行体に対して活発に行使してきた
機関投資家の一つである。
世界的な分散投資をしているカルパースは、2001年8月現在の運用総資産は1510億ドル(約18.1兆円)である。資産運用に関しては基金内の
投資委員会の方針に基づき、理事会が投資の決定し、120人のスタッフの運用担当部門が資産運用業務を行っている。いわゆるエクイティ
関連に運用しているのは923億ドル(約12兆円、全体の61.1%)で、日本株運用は2000年12月末現在約500社、投資残62億ドル(約8,060億円)
である。資産運用は株式以外に債券はじめ、ヘッジ・ファンドや不動産などの代替投資物件にも多角的に分散投資している。このため、例え
一部の部門の運用が不調でも他の好調な他の部門がそれを補えるようになっている。米国内の運用はすべてインデックスであるが、日本を含めた
外国株はインデックス運用とアクテイブ運用を併用している。つまり、インデックス運用が多いため、投資株が低迷してもただちに売却する
ことは少なく、殆ど中長期に保有して受託者責任の一環として投資先企業のガバナンスの実践状況をじっくり分析し、業績不振・株価低迷が
ガバナンスに関連して問題があることがはっきりすれば、「意見の異なる」株主としてモノ申してきた。この場合、カルパースは単独で議決権を
行使する場合と、意見を同じくする内外の他の機関投資家と協調して株主活動を行うこともある。
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2.議決権行使の対象項目
カルパースはアジア・パシフィック地区の株式投資をステート・ストリート・グロ−バル・アドバイザーズ、ブリソン・パートナーズ、
野村キャピタル・マネジメントなど6〜7社の外部の運用専門会社に委託している。このため日本企業の株主名簿には「カルパース」の
名前は直接記載されず、カルパースが指定したグローバル・カストディアンであるステート・ストリート・バンクの名義になっている。
議決権に係わる最終決定は、年金基金の受託者たるカルパースが議決権行使のガイドラインに基づいてアドバイザー機関であるISSやIRRCなどとともにネットで情報交換しながら議決権を行使しているのが現状である。こうしたカルパースのガイドラインはアドバイザーと一緒に、毎年2月頃に過去1年間に提出された各種議案をチェックして必要に応じて更新されている。このガイドラインは米国企業向けと外国企業向けに分けて策定しているが、議決権行使の対象になる項目は下記の通り大分類されている。
- 利益処分に関するもの
- 取締役(会)・監査役(会)に関するもの
- 企業合併などに関するもの
- 資本構成に関するもの
- 定款に関するもの
- 株主提案に関するもの
カルパースは各社の議案をまずアドバイザーにチェックさせ、株主にとってプラスであれば「賛成」であるが、株主利益との関係が微妙である場合は、内容によりケース・バイ・ケース(個別)の判断に委ねられる。纏められた結果(ドラフト)はアドバイザーからカルパースにメールされ最終的にカルパースが独自に結論を出している。カルパースのガイドラインではケース・バイ
・ケースが多いが、理由の如何に係わらず「反対」としているのは、明らかに株主利益に反する場合で具体的には下記の通りある。
- 社外取締役・社外監査役がコンサルタントなどの利害関係がある場合。
- 役員退職慰労金の支払い対象者の略歴が不詳の場合。
- 取締役選任の条件が株式保有を条件としている場合。
- 優先議決権、または取締役の多数選任を可能にする種類株式の発行。
- 議決権に制限がつけられた普通株式の発行。
- 無議決権の普通株式の発行。
- オプションの行使価格が低いか、開示しない場合。
- オプションの行使期間の短縮。
- 保有株式の上限設定。
- その他
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3.最近の議決権行使の実態
カルパースは議決権行使のガイドラインに基づき2000年度は米国内では別紙の内訳のとおり議決権を実行した。自社株買入、合併の承認など株主利益に結びつく案件には賛成比率が高いが、取締役の選任やオプションの案件に対しては反対するケースも少なくない。一方で会社提案の81%に賛成しているものの、株主提案には54%しか賛成していないことは興味深い。
1999年〜2000年のカルパースの米企業向け議決権行使の内訳
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件数 |
賛成件数 |
(同比率) |
反対件数 |
(同比率) |
| 取締役選任: |
1818 |
1438 |
(79%) |
380 |
(21%) |
| 会計監査法人の選任: |
1201 |
1200 |
(99%) |
1 |
(1%) |
| 取締役のオプション: |
41 |
31 |
(76%) |
10 |
(24%) |
| 執行部のオプション: |
909 |
518 |
(57%) |
391 |
(43%) |
| 自社株の買入: |
177 |
170 |
(96%) |
7 |
(4%) |
| 資本関連の変更: |
260 |
214 |
(82%) |
46 |
(18%) |
| 合併の承認: |
248 |
237 |
(96%) |
11 |
(4%) |
| その他: |
385 |
249 |
(65%) |
136 |
(35%) |
| 会社提案計: |
5039 |
4057 |
(81%) |
982 |
(19%) |
| 株主提案計: |
461 |
251 |
(54%) |
210 |
(46%) |
| 合計 |
5500 |
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カルパースは日本をふくめた25カ国以上の外国企業に株式投資をしているが、2000年6月期に「反対」として議決権を行使したのは、アジアでは日本100社、シンガポール13社、マレーシア6社、韓国5社、タイ5社、欧州では仏13社、英7社、独5社であったと発表している。なお、報道によると2001年4〜6月に総会を開催した日本企業に対しては127社に対して議決権を行使し、うち60社に対して退職慰労金と監査役の選任に集中的に反対したと言う。一部の日本企業のストック・オプションに対しては「情報不足」として、また配当金については「配当性向が低すぎる」として反対した。
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