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活動的株主「カルパ−ス」の素顔 (下) −議決権行使の実践的オピニオン・リーダー− |
| (2002年09月06日) |
4.動き出した日本のガバナンス
海外の公的年金が活発な株主活動を行っているにも拘わらず、日本の公的・私的年金はガバナンスに対しては長らく沈黙してきた。しかし、厚生年金基金連合会は議決権行使は長期的に株主利益の最大化に資すると同時に、加入者に対する受託者責任でもあることを認識しはじめ、漸く議決権に係わるガイドラインを策定し、2001年10月に年金資産の受託運用機関に公表した。このガイドラインの基準は、
- 取締役会の構成・規模:効率的な意思決定を行える規模の取締役会と独立した社外取締役が含まれ手いること
- 取締役・監査役に求められる機能:選任にあたりふさわしい人材であることが株主に説明されていること
- 利益配分:役員報酬は全体の報酬額と配当総額とのバランスを考慮すべきであること
- 財務戦略と事業内容の変更:株主利益や事業展開を阻害しなければ議決権を行使すべきであること、
- 企業の社会的責任:反社会的行為があった場合議決権の具体的基準を設定し対応方針を明確にすること
などを盛り込んでいる。議決権を行使しても直ちに株価が上昇するわけではないが、日本の年金にもカルパースがガバナンスをコミットしてから17年の歳月を経て、漸くその考えが日本でも具体化することになったと言える。
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5.資本の論理とガバナンス
ガバナンスの観点から株価が低迷していると思われる株式を早めに大量購入し、その後会社側に経営改善を強く要求し、これに応じない場合は更に当該株式を買い増して、影響力を行使して株価上昇を目的にしたファンドが米英や日本に登場している。これらのファンドは明らかにキャピタル・ゲインを狙ったもので、「錬金術」の手段としてガバナンスを主張していると思われる。その種のファンドはマ−ケットや発行体から忌避されようが、ルールに従っている限り「資本の論理」からは止むを得ないといえる。英国最大の機関投資家「ハーミース」がカルパ−スと1998年11月にガバナンス関連で業務提携してから、カルパースと同様に投資先の仏・独の一部企業を「ガバナンスの実践に問題あり」としてリスト・アップして2000年6月に公表した。これに対し、一部の仏・独の識者はこの米・英の巨大機関投資家の一連のガバナンス行動を、アングロサクソン流の「新しい帝国主義の懸念」と非難したことがあった(2001年2月5日 FT)。歴史的に英・米連合と独・仏が対立してきたことは別にして、カルパースが唱えてきたガバナンスは委託者への「忠実義務」や受託者としての「受託責任」から株主価値の増大を追及し、直接的に「拝金主義」の臭いは余りなかった。欧州のマスコミの一部がカルパースの動きを「帝国主義的」と表現することはコーポレート・ガバナンスの潮流を一面的にしか見ていない見方と言えよう。従って、資本の論理を露骨に示す上記のファンドの唱えるガバナンスと、プルーデントマン・ルールを基調に不祥事防止と競争力向上を株主利益のために志向するカルパースのそれとを比較すると、品位の面で異なると同時に社会的、経済的意義という面からも一定の距離があるといえよう。
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6.エンロン破綻とカルパース
昨年12月に米破産法11条の適用をニューヨークの破産裁判所に突然申請したエンロン社は、内外の多くの機関投資家に投資運用に係わる打撃を与えただけでなく、米会計制度の見直しやガバナンスの再検討を迫るなど様々な影響を及ぼしている。
報道によると、2000年12月に85ドルをつけたエンロン社の株価は紙屑同然となったため、当社の大株主(2001年9月時点)であるフィデリティー、バンカード、アライアンス・キャピタル等の投信大手の投資損失は莫大である。また、カルフォルニア大学基金は投資運用損が約145百万ドル、ニューヨーク州公務員退職年金は同約40〜50百万ドルなど甚大な被害をうけている(2001年11月30日 WSJ)。
エンロン社株を300万株保有していたため、45百万ドルの投資損失となったカルパースは、1993年には代替投資の一環としてエンロンの資源開発プロジェクト“ジュデイー”
に別途250万百万ドルをコミットするなど約10年来の取引があった。ここで問題となるのは、カルパースがエンロン社の経営の透明性、説明責任、情報公開について多くの他社に示すと同じような熱意で当社の取締役会の機能などを株主・債権者の立場として事前に十分監視していたのだうかという疑問を抱かざるを得ない。つまり、カルパースは、
- 会社の財務活動で利害関係があると思われる役員にモノ申したのか?
- 会社から200万ドル以上の報酬や寄付を受けていたコンサルタントの社外取締役への選任に反対してきたのか?
- 1996年から5万ドルの報酬を得ていた大学教授の社外取締役に意見をしたのか?
- 17人の取締役の中、14人の社外取締役がいて、しかも監査委員会の7人はすべて社外取締役であったのにディスクロージャーについて質問していたのか?
多分エンロン社の株価がまずまずであったため、当社のガバナンスをカルパース側は真剣にチェックしなかったと思われる。
一方、カルフォルニアの州監察官はエンロン社の突然の破綻を重く受け止め、州内のカルパースとカルスタースの両年金基金に対し、ガバナンス原則をより厳しく見直すよう今年1月に勧告を発した(2001年1月16日付 WSJ)。この勧告には、1)退職基金積立(401K)の参加は従業員に強制されるべきでなく、2)401kの参加者は会社拠出分は自社株以外のものでも受け取れること、3)401kの参加者は自社株には10%以上投資しないこと、4)自社株投資の従業員はいつでもその株式を換金できること、などを含んでいる。
景気の拡大と株価上昇の時点では見えなかったアメリカの弱点が露見し始めた昨今、カルパースの今年の1〜2月にかけて行われる予定の「ガバナンス原則」はエンロンの破綻により新たな着眼点から見直されることになろう。
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